徒然日記その259. 大学の2006年問題が現実に  (10/12)

 

今年は2006年である。大学の2006年問題をご存じだろうか。今年2006年は新カリキュラムを履修した世代が大学に入学した年なのである。つまり2003年春に始まった文部科学省の新指導要領---「学校週5日制」「超ゆとりの教育のための履修内容大幅削減」---の世代が大学生となったのである。

受け入れる大学側の危機感は相当なもので、例えば京都大学は「2006年問題ワーキンググループ」を作って対応策を協議している。その化学部会の報告書から引用してみよう。

 

1.2006 年問題の背景

a)戦後における学習指導要領の変遷

下図に見るように、昭和 24 年(1949 年)に始まった学習指導要領・教科書検定制度は、日本の小・中・高等学校教育を強く縛ってきた。中教審などの答申によって決められる学習指導要領は時代と共に変遷し、これまでの所、学力低下批判と詰込み教育批判によって振り子のように揺れてきた。1949 年から始まった生活重視型の単元学習は、生徒の系統的な学習を阻害し、学力低下を引き起こしているとして批判され、1961 年から 1979 年にかけては現代までに積み上げられてきた知識を系統的に教え込むことが中心となった。しかし、数学嫌いや教科についていけない児童が大量に出る結果を生み、詰込み主義批判、見切り発車批判の声が大きくなった。また、この時期の後半は、第 2 次ベビーブームの子供達が小学校に入り始めた時期でもあり、将来に受験地獄を連想させた。

その結果、中教審は「ゆとり教育」を提案し、1980年から 2001 年にかけて、指導するのでなく、問題解決を助ける教育」を推奨した。すなわち、授業時間数を減らし、通知簿の 5 段階相対評価を止め、小学校低学年から理科と社会を廃止して生活科を作った。1992 年には小中学校で、完全週 5 日制、総合学習の時間を実施し、主要教科の教育内容を大幅に削減する措置をとった。2002 年からはその仕上げとして、高等学校でも週 5 日制の完全実施と総合学習の時間がスタートした。

 

b)2006 年の入学生

2006 年度には、小・中・高等学校において、新学習指導要領に則った教育を受けてきた学生達の入学を迎える。2006 年に入学する学生達は、小・中・高等学校を通じて、完全週 5 日制と教科内容の削減の下に教育を受けてきた最初の人達である。従って2006 年の大学入学者の学力の低下が全国的に危ぶまれ、「2006 年問題」として、大きな関心を呼んでいる。

左下図にあるように、系統学習が中心となっていた 1970 年頃の主要教科の授業時間数に比べて、2002 年度の授業時間数は 25%の削減となっている。特に小学校の理科の授業時間数の減少は著しく、45%もの削減である。経済開発協力機構(OECD)の学力到達度国際比較によれば、この間に、中学生の数学的応用力は 1 位から 6位に、読解力は 8 位から 14 位に転落した。

また、近年は 2006 年問題に限らず、大学入学者の学力や勉学意欲が低下していると多くの大学教員が認識している。これには、日常の利便性の増加による工夫の減少、少子化に伴うコミュニケーション能力の低下、バーチャル化による実感の不足、さらに、学校教育をする側のゆとりのなさなどが影響していると考えられる。例えば、ゆとりの教育が進行中の中学 2 年生について、1992 年から 1998 年の短期をとってみても、ゲームとテレビ視聴時間の増加と、勉強や読書時間の減少が著しい(右下図)。このような状況は、2006 年問題を更に深刻なものにしている。

引用終わり

2006年問題の背景が分かりやすくまとめてある部分を引用させていただいた。4年後には、超ゆとり教育世代が社会に出る2010年問題が待っている。さて、どうなることやら。

 


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