徒然日記その290. 最近の大学受験 背水の陣 (2/11)

 

受験シーズンたけなわである。今回は、印象に残っている生徒のことを書こう。大学受験生だった生徒である。以前に書いたように、現在の大学入試,特に私大入試では受験機会がべらぼうに多くなったことで一回に合格する受験生が逆に減ってしまって、結局何度も何度も志望大学を受験をしなければいけない。その結果、従来の入試制度ならすんなり第一志望に合格していたような受験生が、なかなか合格しないということが起こるようになった。だから、同じ大学・学部の入学試験の全部の日程に出願して(他大学と試験日がかぶるので、同じ大学・学部の試験が3回あったりする:もちろん入試問題は異なる)少しでも合格する確率を高めねばならなくなる。他の受験生も同じことをするのであるから、確率は上がったりしないのだが、全日程を受験しなけりゃその受験生だけ合格確率が下がるのだ。

こういう入試制度であるから、センター試験が終わって私大の入試が始まるとひたすら受験する日々が続く。うまくリズムに乗れたら実力通りの結果が出て「はい、終わり」となるのだが、疲れも溜まって風邪など引いたりしたらリズムが狂って悪循環が始まるのだ。普段からは考えられないミスをしたり、時間配分を間違って実力全部を解答用紙にはき出せなかったり。悪循環が始まると、「落ち癖」のようなものがついてしまって全滅したりする。私の生徒だった彼もそのパターンで、前期試験は滑り止めの1大学を除いて全滅だった。本命の3大学を全部滑るとさすがに自信を無くしてしまって、後期試験はどこに出願するか悩み始める。悩みがあると受験勉強にも集中できない。だからますます悪循環に入り込む。

では、その彼はどうしたか。ある日、ふっきれたように、「滑り止めには手続きをしない。後期は第一志望の一発勝負をする。ダメなら浪人させてもらえるよう家族に相談した。」と。学力的にはいけるはずだが、後期の定員は極端に少ないので小さなミスが命取りになる。だから私も心配になったが、彼の言葉の力強さに押されて、「よし、やってみろ」と答えることにした。

3月半ばの合格発表の日、彼からの電話が鳴った。「先生、やりました!」---彼の嬉しそうな声を聞いて私も嬉しくなった。彼は入試を通じて成長したと思う。彼は、ちょうど愛知の公立高校入試の激変年に当たってしまって公立2校落ちを経験している。そういう経験をすると、自信を無くして弱気の選択をしてしまいがちになる。が、彼は大学受験では背水の陣を敷いて自分に打ち勝ったのだ。もちろん誰よりも勉強に努力したことは言うまでもない。


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