徒然日記その265. 最近の大学 坂本龍馬を知らない大学生  (12/20)

 

大学の2006年問題について何度も書いたが、ついに現場の声があがってきた。事態は想像以上にひどいようである。

朝日新聞の記事(2006年12月18日)を引用してみる。

「ゆとり」原因 学力不足深刻 大学の2割で補習

2006年12月18日12時17分

 高校の必修科目で履修漏れが次々と発覚したことについて、高校生を受け入れる大学側はどう感じているのか。関係者に尋ねたところ、学生の知識水準の低さへの危機感は強く、履修漏れ問題の前に「小・中学校を含む『ゆとり教育』」をやり玉にあげる声が相次いだ。国公私立合わせて大学全体の2割にあたる159校が、高校レベルの知識を補うために補習をしている。

■「せめて必修は学んで」

 取材で聞いた学力不足の例は表の通り。教授らが実際に体験したことばかりだ。

 「学生の知識不足は、ゆとり教育が本格導入された約20年前に始まった」。東北大学の荒井克弘副学長は言う。「能力が低下したのではなく、小中高での学習範囲が狭まったせいだ。大学の授業にうまく接続できず、困っている」

 「小学校で教えるべきことが中学校に回され、中学校で教えるべきことが高校に回されている。週5日制という限られた時間の中で、高校の先生は(科目の)選択と集中をせざるを得なかったのではないか」。こう同情するのは東京農工大の佐藤勝昭副学長だ。

 こうした高校までの事情に、大学側の都合が重なる。入試科目を絞って受験の負担を軽くし、特色を出して学生を集めようとする取り組みが私立大を中心に急速に広がった。推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試など一般入試以外での入学者は、私立では全体の49%(06年度)に達する。数学の一部を学んでいない経済学部生、物理を履修していない理学部生が珍しくない。

 大阪大は来年度から、高校の教科書を使って、「市民のための」と名づけた世界史の授業を始める。正規の科目として単位も認められる。学内で案が出たのは今年9月で、履修漏れ問題が明らかになる前のことだ。

 琉球大の理系学部は数学と物理、化学について、通常の授業のほかに高校レベルを含む入門クラスを用意。私立の関東学院大の工学部は、数学などの基礎科目を重視したカリキュラムをつくり、「学生支援室」も置いた。「補習の時間は設けていなくても、日々の授業で高校の学習内容を補わざるを得ない」との声も多い。

 「ゆとり教育が本当に意義のあることか、見直す必要がある」(長崎大)、「記述式の問題を増やすなど、幅広い知識がないと乗り切れない入試にすべきだ」(京都大)といった声があふれる。教員養成系の大学・学部では、「先生の卵が知識不足では学力低下が拡大する」(埼玉大の渋谷治美・教育学部長)と切実だ。

 履修漏れについては、「ゆとり教育から派生した問題」とのとらえ方が一般的だ。「せめて必修の科目はもれなく学んでほしい」(京都大)、「国立大は入試の5教科7科目を守るべきだ」(埼玉大)との声もあるが、「現実」をにらんだ要望も目立つ。

 多いのは、必修科目の見直しを求める意見だ。「芸術は外せ」「日本史を加えるべきだ」など様々な取捨選択案のほか、理科基礎と理科総合A、理科総合Bなどと細かく分かれた科目の統合を求める声もある。東北大の荒井副学長は「小中の延長として高校教育を考えがちだが、社会で働くには、大学で学ぶには、といった逆からの発想も取り入れて見直す必要がある」と提唱する。

 また、授業の時間数やカリキュラムについても、「週5日制を見直し、せめて月2回ぐらい土曜授業を復活させては」(京都大)、「5日制を変えられないなら、各教科に充てる時間を柔軟にするなど学習指導要領を弾力化してはどうか」(東京学芸大)といった意見が出ている。

■「なぜ必要か」学生に示せ

 大学の授業が理解できる学力をつけさせようと昨春発足した日本リメディアル教育学会の小野博会長の話

 学力不足の学生が多数在籍する悩みと無縁な大学はわずかだろう。同じ大学の同じ学部でも、学生間で学力に大きな差が出てきたのが現状だ。AO入試など入り口が多様化した結果、履修漏れと同じ発想で「入試に必要ないから勉強しなかった」という学生が目立つ。少子化の影響で、以前なら大学に入れなかった学力の層が入学していることも否定できない。

 ただ、そうした学生を「切り捨て」ては大学運営は成り立たない。入学させた以上、リメディアル(補習)教育は大学の使命でもある。取り組む大学は年々増えているが、補習を必要としない優秀な学生だけが熱心に聴いていたり、中高の6年分を1年で済ませたりする大学では成果が出ていない。「なぜ必要か」を学生に示しながら丁寧に教えるべきだ。

●大学教授らが直面した学力不足の例

〈歴史〉

・第1次、第2次世界大戦の時期がわからない

・坂本龍馬やゲーテを知らない

・ユーロを知らず、EC(欧州共同体)とEU(欧州連合)の区別もつかない

〈地理〉

・ベトナムやコロンビアの場所がわからない

〈数学〉

・分数の足し算の仕方(通分)を忘れている 、

〈英語〉

・「三単現(三人称単数現在形)のs」を頻繁につけ忘れる

・英検3級がとれない

〈国語〉

・語彙(ごい)力が中学生以下で論文を読めない

以上、引用終わり。

ゆとり教育路線にもとづいて小中高で教える内容や時間数を減らしただけでなく、大学が受験生を集めるために受験教科を減らしたり多様な受験制度を取り入れたりしたので、こうなったのである。こんな状態では最高学府とは言えないかも知れない。さて、この先どうなるのであろうか。

 


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