最近の教育事情 その1 親の意識


 いま学校は様々な問題を抱えている。戦後半世紀が過ぎ、週休二日制の導入、授業内容の削減など、文部省も次世紀の教育を目指して模索を続けている。こうした過渡期にある学校教育を、親はどんな思いでみているのだろうか。経済企画庁は、一昨年実施した「国民生活選好度調査」の中に、「教育について」の調査を追加した。調査結果から、親の意識を追ってみた。

 

教育内容

 小中学校で教わる教育内容は、1970年以降やさしくなっている。中学校の教科書は、71年から92年にかけて約二割程度もページ数が減少し、薄くなった。にもかかわらず、20%の人は「もっとやさしければよい」と答えている。特に小・中学生や高校生、大学生をもつ母親にそう考える人が多いという調査結果だった。

 子供の教育に関しては、父親より母親がより熱心で、成績のことや受験に対して敏感であることがうかがえる。家庭で子供の勉強をみるのは母親の役目で、成績に一喜一憂するのも母親という図式は、今も昔もそれほど変わっていないということだろう。

 

クラス編成

 現在の教育内容が「もっとやさしければよい」と考えている母親が多いことから、子供が授業についていけないと思っている母親も少なくないと考えられる。が、問いの『現在の学校教育では授業についていけない「落ちこぼれ」の問題とともに授業が簡単でつまらないという子供の存在もよく耳にします。そういった問題に対応するために、中学校に能力別クラス編成を導入してはどうかという意見がありますが、あなたはどう考えますか』に対して、小中学生を持つ親の多くは否定的な回答をしている。「落ちこぼれのような印象を与えてしまうので好ましくない」という理由が大半で、「競争が激しくなるので好ましくない」と考える人も多く、学校教育では、学力よりむしろ心の教育を望む傾向にある。

 青少年犯罪の増加と低年齢化など、子供を取り巻く現象が複雑になってきていることへの不安もその一端として考えられるが、不登校やいじめなどの問題が身近な問題になってきていることも察することができる。

 

学校より塾

 文部省では93年に「学習塾等に関する実態調査」を行った。その結果、小学生の23.6%、中学生の59.9%が塾に通っていることが分かった。その後も通塾率は上昇し続けている。上昇の原因として、学校に対する信頼が薄れ、学力のことは塾に頼る親が増えてきたことがあげられる。総理府の「教育に関する世論調査」と経済企画庁の「国民生活選好度調査」の二つの調査で見てみると、ここ20年の間に、学校への期待が著しく減少している。

 「あなたは学校での勉強と、進学塾、進学教室、家庭教師等から教わる勉強とどちらが子供にとって学力の向上に役立つと思いますか」という問いに対して、76年には71.7%の人が「学校」と答えていたのに、96年に「学校」と答えた人は23.3%にまで減った。

 「一概に言えない」と答えた人が多いものの、進学塾、進学教室、家庭教師等と回答した人は、76年には9.2%だったのに、96年には15.3%と増加している。大都市ほど「学校」と答える人が減少していることから、都市部では塾などへの依存が高いとみられる。

 また、所得や親の学歴が高いほど「塾など」と回答する比率が高くなっていることから、塾に通わせる余裕のある人ほど、塾への期待が高いといえる。同じ学歴でも、所得が高いほど「塾など」と回答する人の比率が高いことからみて、家庭の教育費の割合と塾への期待は相関関係にあることがうかがえる。昨今の景気低迷で、家庭における教育費も削減の傾向にあり、学校ばかりでなく、塾も内容の充実が求められる時代である。

 


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