最近の教育事情 その2 教育費の問題


 高学歴化の進展に伴い、教育支出が家計を圧迫している。特に大学生をもつ親の負担は大きく、子供が小さいうちからの心積もりが望まれる。実際の数字をあげながら、教育費を追った。

 

高学歴志向

 最近は不況の影響もあり、「大学は出ても就職できない」が現実の問題になっている。そこで専門知識を持った人やユニークな人材が脚光を浴びるようになった。それを裏付けるように、リクルートリサーチの「学歴に関する企業の意見調査」では、採用戦略上、一流大学卒業者をどの程度重視するかとの質間に、73.7%の企業が重視しないと回答している。もはや学歴だけでは就職できない時代になった。

 にもかかわらず、高学歴志向はあいかわらずで、男の子の場合、父親の66.3%、母親の74.3%が大学を卒業させたいと望んでいる(平成五年調査)。NHK世論調査部が平成四年に行った調査でも、「実力があっても学歴がなければ認められない」と考える親は70%以上にのぽり、学歴社会が進学率に影響を与えていることを物語っている。実際の大学進学率(短大を含む)は男子40.9%、女子45.9%(平成六年)で、短大を除くと、男子の大学進学率のほうが高い。

 

教育費

 高学歴の進展に伴って、教育費が家計に占める割合が高くなっている。子供の数が多いほど、住居や被服などの費用を削ったり、貯蓄を崩して教育費に回すなどの苦しい家計がうかがえる。

 総務庁の家計調査によると、勤労者世帯における教育費比率(教育費が消費支出に占める割合)は、昭和48年以降上昇し続けている。試算によれば、一人の子供が成人するまでの子育てコストはおよそ二千万円とみられている。

 教育費の内訳では、大学への支出が高いのは当然だが、大学進学率が増加し始めた昭和四十年代後半から学習塾などの補修教育への支出割合も急激に増加している。

 

高負担

 子供に高学歴を望む親が多いが、実際の金額として、学校教育にどれほどの負担を覚悟しなければならないかをみてみよう。

 中学校は義務教育のため、初年度納付金の平均額は公立だと十万九千円で、私立の場合は約九十六万円。高校は公立でも授業料がかかるので、初年度納入金の平均額は公立で約二十八万円で、私立の場合は約九六万円。

 大学は初年度納入金の金額は国立が六十七万円で、私立の場合は平均九十から百三十万円(医科歯科・芸術系以外)。通学できずに下宿した場合の平均仕送り額は九万八千五十円で、それ以前に、住居の確保のため敷金・礼金・家賃・生活用品費などの費用が約六十万円必要となる。最も支出額の大きい私立コースの下宿の場合、大学の一年間では初年度納付金なども含めると約二百五十九万円が必要。この入学時の負担感は「たいへん重い(30.4%)」「重い(56.1%)」と、私立大学へ子供を入学させたほとんどの親は、負担が重いと感じている。

 ちなみに教育費支出の負担感を平成四年度の「国民生活選好度調査」でみてみると、「負担は大きい(どちらかといえば大きいを含む)」は、第一子が小学生または中学生の親37.5%、同じく高校・大学・大学院などの学生の親62.3%となっている。

 昨今の不況で教育費が足りない家庭が多くなっているとみられるが、文部省は、家庭の教育費負担を軽くするため、来年度から大学生向け日本育英会の有利子奨学金の貸与総額を約一千億円増額し、貸与対象を、現在の十万人から二十万人に倍増させる方針を固めた。学生が借りられる月額も最高十万円程度まで増やすほかに、貸与基準(親の年収)も大幅に緩めるという。

 子供の年齢が高くなるにしたがって教育費が増加し、貯蓄を取り崩さざるを得ないことになるので、高校以上の教育資金は、早い時期から蓄えることが望ましいだろう。

 


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